(アマミシリケンイモリ&アカハライモリなど)拒食後、餌食いの悪いイモリへの給餌方法(陸上飼育⇒水中飼育へ移行)

※2024年春に最新版の記事↓を作っています。風船病や拒食の予防、治療などについて「より簡単な方法を紹介」していますので、ぜひこちらもお読みください。

 

アマミシリケンイモリの「風船病対策」&「拒食対策」について~2024年3月版の徳留アクア工房の徳留としての経験則より~ (アカハライモリ、二ホンイモリ、オキナワシリケンイモリ、海外産イモリにも共通する情報だと感じています)
※2024/3/29に一部修正。本文中の「腎機能の低下=腎臓や皮膚から水を給収&排出する機能の低下」と読み替えて下さい。「両生類の場合は、腎臓だけでなく皮膚でも水分を給排水しているため」および「飼育ケースが蒸れることが風船病の引き金になりや...

 

アマミシリケンイモリやアカハライモリの備忘録として「拒食後、餌食いの悪いイモリへの給餌方法(陸上飼育⇒水中飼育へ移行)」を記載しておきます。

水棲イモリの拒食(特に、採集した個体が何も食べない)にお困りの際は、ご参考にしてくださいませ。

※この記事は、①採集した個体が最初から何も食べない②人工飼料を食べていたのに、急に「冷凍赤虫」も含めて何も食べなくなった――という場合を想定しています。

 

アマミシリケンイモリの拒食について

シリケンイモリの飼育方法としては、「水場100%+水草で足場をつくるアクアリウム」や「半分程度の陸地をつくるアクアテラリウム」が多いかと思います。

このような飼育環境の場合、たとえ採集したばかりの個体だとしても、大抵は「冷凍赤虫」に喰いつき、ラッキーな場合は「人工飼料(イモリの餌やウーパールーパー餌など)」も食べてくれる個体が少なくありません。

私が、奄美大島で採集してきたアマミシリケンイモリや、鹿児島県内で採集してきたアカハライモリ達も、多くが冷凍赤虫や人工飼料を食べてくれます。

しかし、採集してきた個体の中には、「蛾の幼虫やコオロギしか食べない」「巻貝しか食べない」――そして「何も食べない」――という子達がときどきいます。また、両生類や爬虫類は、複数飼育や移動のストレスなどで、ある日突然「拒食(餌を食べなくなること)」することがあります。

元々、アマミシリケンイモリやアカハライモリは代謝が低めの生物なので1ヶ月程度は餌を食べなくても元気にしていることが多いのですが、一度拒食してしまうと「ガリガリに痩せてしまう⇒餌を死ぬまで食べなくて餓死する」ことも少なくありません。

また、複数飼育をしていると「小さめの個体や喧嘩負けする個体」が餌を食べられず、気が付いたらかなり痩せてしまっていた――しかも、気が付いた時には拒食して何も餌を食べてくれない――ということを、私も何度かしてしまったことがあります。

今回は、そのような「拒食(餌を食べてくれない)個体に、しっかりと餌を食べてもらう方法」を紹介したいと思います。

「何も食べないアマミシリケンイモリ」は、最初に陸上飼育する

はい、最初にすることは見出しの通りです。水場を100%無くして、陸上飼育に切り替えます。

脱走しないように中型のプラケースを飼育容器にして――
①赤玉土か熱帯魚用のソイルを底に3㎝程敷いて、ギリギリまで水を入れる。
②ミズゴケもしくはシノブゴケなどを手のひら1杯分くらい、ふんわりとさせて飼育容器の片方に入れる。
③隠れ場となるシェルターを入れる。
④拒食したイモリを入れる。(中型プラケースで多くても上限4匹まで)
――というようにセッティングをします。

特に、③の隠れ家は重要です。隠れ場所があるとイモリが落ち着き、その後の餌食いにかなり良い影響があります。

 

日常の管理方法は――
①乾燥しないように、毎日、コケとソイルに霧吹きをたっぷりする。
②フンがカビないように、みつけたらピンセットなどで取り出して処理する。
③最初は1日置き、その後は2日置き程度で給餌する。
④2週間に一回を目安に、「汚れる前に」掃除をする。
――というようにします。

イモリが落ち着ける環境を意識して下さい。

 

好みの餌を「ばらまき給餌」で探してみる

陸上飼育の場合、人工飼料はなかなか食べてくれません。しかし、「ハニーワーム」「コオロギ(ヨーロッパイエ/フタホシ)」「デュビア」「シルクワーム」「ミルワーム」「ワラジムシ(ホソ/ナミなど)」「ドバミミズ」「陸上の小型カタツムリ」という活餌を与えることができるので、イモリが好むであろう餌を探すための選択肢を増やせます。

活餌を「1匹ずつ、イモリの目の前に落す」ことで、食べてくれるか反応を見ます。イモリが餌を見つめて、喰いつくようなら成功です! 「ぷいっ」という感じで嫌がる素振りをみせたら、その餌は今回は合わなかったということで取り除きます。(ぷいっとする餌を、無理に食べさせようとすると拒食の状態が悪化しますので、無理強いはしないようにしてあげて下さい。ピンセット給餌も同様です)

なお、飼育ケースの中に活餌が常に入っている状態は、「イモリにとってストレスになること」がありますので、出来る限り「1匹ずつ与える&食べなかったら取り除く」ことを心掛けて下さい。

↑ハニーワームという、イモリが好む活餌の一つ。脂肪分が多いので、単食や頻繁な給餌は避けたいのですが、ガリガリになった時にイモリを立て直すには欠かせない餌でもあります。

 

(余談:私の定番の活餌)

「①ハニーワーム ②ヨーロッパイエコオロギ ③ホソワラジムシ」が私の定番の生餌です。

なお、いずれの生餌も「一口で食べられるサイズ」であることが大切です。餌が大きすぎる場合、口に入っても吐き出すことがあり、最悪では「消化不良を起こす(=体内にガスがたまり、最悪死亡する)」こともあります。

 

(余談:浅めのエサ皿にエビやメダカなどを入れて給餌させる)

上記までの餌に反応しない場合や拒否する場合には、爬虫類用のエサ皿(1~2㎝の浅めで生き物が逃げ出さないもの)に水を張り、「ミナミヌマエビ」などの小型のエビや「ヒメダカ」、「サカマキガイ」などの水棲巻貝をいれて与える方法も試してみる価値があります。(エビやメダカはなるべく小さいモノを選んで下さい)

昆虫やミミズなどに反応しない個体が、これらの餌には反応してもりもり食べたことがあります。

 

ピンセット給餌に慣らす

ラッキーな場合(9割+αくらい)では、陸上飼育をしていれば、翌日~1ヶ月以内にはイモリが活餌を食べてくれるようになります(最初は活餌を食べなくても、お腹がすいたら食べてくれるようになる子も少なくない)ので、食べてくれる餌を見つけたら「しっかりと好みの餌を与えて、ガリガリ体型⇒すこし痩せている程度の体型」まで回復させます。

なお、ばらまき給餌で3日程経ったら「活餌=美味しいご飯」だとイモリも認識してくれますので、「ばらまき給餌⇒ピンセット給餌」に切り替えます。今まで目の前に餌を落としていたのを、ピンセットでつまんで食べさせる方法にするのです。

この「ピンセット給餌」にはメリットがあり、「ピンセットで抓んだもの=美味しい餌」とイモリに認識させることができます。そのため、活餌だけしか食べないイモリも、ピンセット給餌を続けることで「ピンセットで抓んだ、冷凍赤虫や人工飼料を食べる」ように切り替えることができます。

ピンセットで冷凍赤虫や人工飼料を食べるようになったら、水中でもこれらを食べてくれますので水中飼育に切り替えます。

※冷凍赤虫は、必ず「常温に溶かして」から与えて下さい。気温にもよりますが、常温で10~30分放置すれば大丈夫です。大抵の個体は大丈夫ですが、赤虫が冷たいままだと食べてくれない個体も、しばしばいます。

(余談:どうしても何も食べてくれない「残り1割未満」の場合)

アマミシリケンイモリに偶にいるのですが、「どの活餌も食べてくれない個体」がしばしばいます。50匹いれば2匹~3匹くらいでしょうか。この状態になってしまって、2ヶ月も3ヶ月も餌を食べてくれないと、どうしても餌を食べて欲しいのが飼育者というもの。

ネット上では「強制給餌」という方法も有ったりしますが、強制給餌は消化器官を痛めたり、イモリの顎を痛めたりすることがありますので私はお勧めしません。それよりも、1ヶ月以上の拒食が続く場合には「環境を大きく変えること」をお勧めします。

そう、陸上飼育⇒水中飼育への切り替えです。

ピンセット給餌で餌を食べてくれるようになった子も水中飼育へ移行させるのですが、「完全に何も食べてくれない子も1ヶ月経過したら水中飼育へ移行」させて、次の方法を取ることで餌食いを大きく改善させることが出来る場合があります。

 

拒食していたアマミシリケンイモリを水中飼育に移行させる

陸上飼育していたイモリを、水中飼育へ移行させます。

こちらも、脱走しないように中型のプラケースを飼育容器にして――
①赤玉土か熱帯魚用のソイルを底に3㎝程敷いて、容器の2/3程度の水を入れる。
②スポンジフィルターか水中フィルターを設置する。
③隠れ場となるシェルターを入れる。
④足場となる水草もしくはそれに代わるものを入れる。
⑤拒食したイモリを入れる。(中型プラケースで多くても上限4匹まで)
――というようにセッティングをします。

特に、③の隠れ家と④の足場は重要です。隠れ場所があるとイモリが落ち着き、その後の餌食いにかなり良い影響があるのは陸上飼育と変わりません。また、足場は「(陸上飼育で肺呼吸に慣れていた)イモリが溺れるのを防ぐ(水中飼育に慣らす)」ためにも必ず入れてあげて下さい。

 

日常の管理方法は――
①1~2日置き程度で給餌する。
④2週間に一回を目安に「汚れる前に」飼育容器の掃除や2/3の水替えをする。
――というようにします。

水中飼育でも、イモリが落ち着ける環境を意識して下さい。

↑の水槽では、スポンジフィルターを沈めるために人工物(水槽装飾用の流木)で重石をしています。この人工物が足場兼隠れ家となっています。

コツとしては、「足場に乗っても鼻が水中に入る程度」にすることです。水中に鼻が入っていれば、人工飼料や冷凍赤虫などの匂いを感じることができ、餌食いが良くなります。

 

ピンセット給餌に慣れたイモリを水中飼育する場合

ピンセット給餌で冷凍赤虫や人工飼料に慣れたイモリは、「水中飼育に切り替えた翌日」から、水中に冷凍赤虫や人工飼料を入れるだけで喰いついてくれると思います。

もし、いれただけでは食べなかった場合には、「ピンセットで抓んで、水中で与える」ことを何度かしているうちに、自分で食べてくれるようになります。

 

拒食しているイモリの環境変化で、水中飼育に切り替えた場合

ここまで、1ヶ月以上餌を食べてくれなかったイモリちゃんですが……水中飼育に切り替えて「2~3日落ち着かせた後」で「ピンセットで揺らしながら餌を与えること」で、餌を食べてくれることがしばしばあります。(私の家では、頑固に拒食していた子も、ほとんどコレで成功させています!)

この時、与える餌は「冷凍赤虫」や「ハニーワーム(ハサミでちょっと傷をつけ、体液をしみ出させたモノ)」などの匂いがする餌を与えます。

これで餌を食べてくれたら、「ピンセットで冷凍赤虫⇒ばらまき冷凍赤虫⇒ばらまき人工飼料」というように慣らしていきます。

 

まとめ(アマミシリケンイモリの拒食について)

今回は、アマミシリケンイモリやアカハライモリでしばしば起こる「拒食」への対処法を紹介してきました。これで、水棲イモリの拒食は怖くありません♪――とはいえ、拒食は「予防すること」が大切です。

両生類は一度状態を崩してしまうと、元気な状態に立て直すには時間も手間(陸上飼育⇒水中飼育へ)もお金(設備や活餌代)もかかります。繁殖させたいと思っていても、拒食した状態では元気な卵を産んではくれません。

 

拒食させないポイントとしては――
①人工飼料に慣れている個体を手に入れる(採集でも養殖でも、餌食い確認済みの子にする)
②過密飼育をしない(ケンカやストレスが拒食要因になります)
③隠れ家や水草の多い、イモリが落ち着ける環境で飼育する(ケンカ対策にも)
④痩せている個体がいたら、しばらく個別管理をしてあげる
――です。

ガリガリに痩せてしまうと、拒食から立て直すのが難しくなります。ぜひ、日々の管理では、予防&早めに対策で気をつけてあげて下さい。

 

なお、徳留アクア工房のWEBショップで今後、販売する予定のアマミシリケンイモリやアカハライモリは、「自家養殖個体も採集個体も、人工飼料に餌付いた状態で販売」を計画しています。

我が家で使っているのは、お勧め順で「ウーパールーパーの餌(Hikari)」や「ベビーゴールド(Hikariの金魚の餌。色揚げにも効果的!)」、「レプトミン(テトラ・スティック状)」になります。これらの人工飼料に、ときどき「冷凍赤虫」と「ハニーワーム」を与えています(繁殖期の前後には特におすすめです)。

徳留アクア工房でアマミシリケンイモリやアカハライモリを購入された方は、これらの餌をぜひ与えてみて下さい。