(初めてのイモリの飼い方)アマミシリケンイモリやオキナワシリケンイモリ、アカハライモリの水中飼育のセット方法

先日、知人にアマミシリケンイモリをペアで譲ったのですが、このHP上では「初めてのイモリの飼い方」を紹介していなかったと気付きました。

そのため、今回の記事では、シリケンイモリ(アマミ、オキナワ)やアカハライモリの水中飼育の環境のセット方法を紹介したいと思います。国内産イモリで個人が飼育できる種(ようするにイボイモリ以外)ならば、基本的にこの方法で長生きさせることができます。

5~20年生きるイモリちゃん達を、ぜひお迎えしてあげて下さい♪(WEBショップでも、近日中にアマミシリケンイモリをペアで販売開始予定です♪ 興味がある方は、ぜひお問合せ下さい)

 

 

準備するもの(イモリの水中飼育)

(必要な物)
・飼育容器(しっかり蓋が閉まるものが必須。例えば、15~20L前後の中型プラケースなら、ペア~3匹程度までは元気に育てられます)

・底砂(茶色のソイルが好ましい。誤食しても体内で砕けて排出されるため)

・水草(ライトやCO2が無くても育つ「アナカリス」、「ウイローモス」などがおすすめ)

・人工餌(イモリの餌は各種出ていますが「ヒカリのウーパールーパーの餌」などがおすすめ)

・カルキ抜き(水道水を飼育水に使う時は、カルキを抜いてあげて下さい)

(あると便利な物)
・冷凍赤虫(人工飼料を食べない時は、こちらを与えると食べてくれることが多いです。環境の変化などで、一時的に人工飼料を食べない子もいるので、持っていると安心です)

・水中フィルター(エアポンプ式のスポンジフィルターなどを入れておくと、水が動くので油膜が張らず、水も傷みにくいです。小さなものでもいいので、入れておくと管理が楽になります)

 

セッティング方法(脱走には注意!)

①飼育容器を水洗い(洗剤やスポンジは使わずに手洗い)します。プラケースなどは、製造時に型から外す「剥離剤」が付くことが多いので、流水で洗い流すのです。

 

②飼育容器に底砂を入れます。大磯砂なども使えますが誤食が怖いので(心配いらないという方もいますが)……私は個人的には安心できるという意味で「ソイル(土を丸めて、焼き固めたもの)」や「赤玉土」をお勧めしています。ソイルや赤玉土なら、イモリが食べてしまっても体内で砕けて排出されますので、心配が少なくてすみます。

※当工房では「明るい茶色系のソイル」をお勧めしています。真っ黒なソイルよりもイモリの色が認識しやすく、イモリ自身の体色も明るめになって、ラインや模様がはっきり出てきやすいからです。

 

③カルキ抜きした水を10~15㎝程度入れて、水草を入れます。「水量が多い方が水質が安定する」かつ「水草がイモリの足場になる(休憩所や呼吸の足場)」ので、そのバランスを考えると飼育ケースの半分から3/5くらいの水深がお勧めです。また、そのくらいの水深なら観察もしやすいです。

 

④水温が常温になっていることを確認(セットしてから30分程度放置すればOK♪)してから、イモリを飼育容器に入れます。

 

⑤蓋をしっかり閉めます。蓋の締め忘れで脱走されると、イモリの命に関わりますので気をつけてあげて下さい。

 

⑥翌日以降、人工飼料を少量あげて餌食いを確認します。しっかり食べてくれるようなら、2日おきで餌を与えます。人工飼料を食べない場合には、「冷凍赤虫」を与えてみて下さい。なお、えさの量や頻度の目安は「4粒/1匹×2~3日に1回」ですが、季節や水温でも変わってきますので次項をご参照下さい。

↑このような餌も食べてくれます♪ 亀や爬虫類の餌は、カルシウムも多めなのでイモリでも重宝します。

 

イモリの餌やりについて

イモリの餌やりの目安を紹介します。餌が足りないとイモリが痩せてきますし、餌が多すぎるとイモリが太って脂肪肝になり突然死する原因になります。人間と同じで様子を見ながら調整をしてあげて下さい。

実際に徳留アクア工房で与えている量を紹介します。

キョーリン:ウーパールーパーの餌(人工飼料)

(♂♀のペア飼育の場合)

☆春、秋、冬:「4粒×2匹」を2~3日に1回。但し、痩せてくるようなら粒数を増やして調整。

☆夏:「4粒×2匹」を1~2日に1回。但し、気温が高い時期などに痩せてくるようなら、毎日朝晩与えたり、粒数を増やして調整する。

 

(複数匹でまとめて飼育の場合)

☆基本的に、上記の粒数×飼育頭数で餌の量を管理。但し、複数匹ではケンカ負けして餌を取れない個体がしばしばいるので、痩せてきた個体は別容器に隔離して個別に餌を与える必要があります。ここでガリガリに痩せさせると「拒食(餌を食べられなくなる)」することがあり、元気な状態に戻すのには多大な労力がひつようになります。拒食は予防してあげて下さい。

冷凍赤虫(産卵期前後やおやつとして)

2週間に1回、人工飼料の代わりに与えると状態がいいようです。また、飼育下での産卵期にはいる前の10月~12月に冷凍赤虫(タンパク質)を多めに与えておくと、卵をたくさん産んでくれる(体力がつく)ようです。

小さなキューブ上で小分けにして売られている冷凍赤虫が便利なので、与える時にはキューブ単位で与えます。完全にとかしてから与えるのが原則ですが、溶け切らない状態でも気にせず喰いつく個体も多いので、イモリの様子を見ながら与えて下さい。

ハニーワーム等の活き餌(拒食時に効果的!)

拒食した時には、活餌しか食べない子もいます。その場合の与える餌の量は、「毎日朝晩に1匹ずつ~2日置きに1匹ずつ」など、個々の状態に合わせて調整します。

栄養バランスに気をつけるのが大原則ですが、食べる餌があるのなら、どんどん食べさせて体力をつけたり、口を使わせることに慣らすのが拒食時には重要です。

イモリの拒食については、過去記事にまとめてありますので、ぜひそちらも見てみて下さい。(右上の検索まどから、「アマミシリケンイモリ 拒食」で検索できます)

余談1:色揚げ効果を持つ金魚の餌(赤色が鮮やかになります)

これはちょっと余談なのですが、金魚の色揚げ用の餌を与えるとイモリも赤くなります(笑)

元々の黒い部分は変わりませんが、赤いラインやお腹の部分は「色揚げ効果でより紅くなる」のを、私自身もアカハライモリで確認しています。

もちろん、イモリの色揚げは賛否があると思いますので……販売用のイモリには色揚げ餌は使いません。ですが、「赤が綺麗な個体などをより赤くする餌として、金魚などの色揚げ餌は効果がある」ということを情報として提示しておきます。

余談2:イモリの色彩変異個体と詐欺的行為(色の誤魔化し)について

インターネットオークションやネット取引などでは、「色彩変異個体」としてノーマル個体が売られていることがしばしばあります。販売者の悪意だったり、販売者の知識不足が原因としてあげられますが――手元に想像したものと違うイモリが届いたら、やっぱり残念な気持ちになりますよね。

太陽光の下、カメラのフラッシュの有無、底砂の色(保護色)などで、イモリの色は大きく変わります。また、各自のモニターの色、画像加工の有無など、パソコンやスマホの状態でも変化があります。(あとは、輸送直後は真っ黒に色がなることも一時的にあります。これは3日前後で元に戻りますが……)

色味の方法はそれぞれの条件下(最低、「太陽光、フラッシュ有り、フラッシュ無し」の3つは必須)で撮影した写真を見せてもらうことしかありませんが……一番良いのは対面で現物確認をして購入することです。3万円を超えるようなイモリを買う場合には、現物確認をなるべくしてみて下さい。

なお、徳留アクア工房では、希望者には「LINEなどのビデオ通話」でリモート確認をしてもらうことも可能です♪

 

イモリ飼育の注意点

イモリ飼育で気をつけたいことや、元気に飼育するコツについて紹介します。

①輸送直後は体色が黒くなっていることが多い。

輸送直後は、イモリの体色が黒くなることが多いです。そのため、ラインが消えたり、柄が消えたりするように感じられる個体もいますが、「新しい環境に慣れることで発色が戻る」ため、3日~1週間程度は様子を見てみて下さい。

なお、「水温が許容値を超えている(5度以下、29度以上)」「水質が悪い(白濁りや化学物質汚染など)」、「真っ暗な場所で管理している(カーテンを締め切った部屋など、人間でも暗いと感じる場所で飼育)」等の場合には、色が戻らないことがありますので、なるべくイモリが健康で安心して過ごせる環境を用意してあげて下さい。

②脱走に注意を

イモリは脱走の名人です! 1㎝×1.5㎝の隙間があるとかなり危険で、イモリの頭が通る隙間なら確実に脱走ができます。脱走をしてしまったら、半日ほどで「イモリの日干し」が出来上がってしまいますので、隙間を塞ぐなどの対策をしてあげて下さい。

また、イモリの力はけっこう強いので、金網などで水槽をガードしていても「重石が無い」「養生テープなどで固定していない」状態では、持ち上げて脱走してしまうことがあります。その他、プラケースの蓋をかっちりしめるのを忘れていて、脱走される事故もあり得ます。

イモリが脱走しないように、蓋をしっかり閉めて、隙間を塞ぎ、重石やテープ補強を必要に応じてしてあげて下さい。

③定期的な水替えを!

イモリは丈夫な生き物ですが、水質が悪い状態で飼うと病気になったり、拒食したり、脱水症状を起こしたりします。

理想は(今回の事例の水槽では)10日~2週間に1回の水替えです。そして、「(餌の食べ残しが多いなどで)水が白く濁った」時にはすぐに全部~1/2の水替えをしてあげるなど、綺麗な水を維持するように注意してあげて下さい。

 

まとめ:日本産イモリの水中飼育について

ここまで、日本産の水中飼育について紹介してきました。

基本的に、日本産のイモリちゃん達はこの飼育方法で1年中飼育をすることが可能(天然記念物のイボイモリは陸上メインの飼育方法になりますが)です。もちろん、シリケンイモリやアカハライモリでも、卵~親になるまでの間には、完全水中飼育や陸上飼育などで環境を変えてあげる必要がある時期も有ります。ですが、それはまた別の機会にしたいと思います。

皆様も、ぜひ可愛いシリケンイモリやアカハライモリちゃん達をお迎えして、末永く飼育を楽しまれてみて下さい。イモリの世界にハマってしまうこと、間違いなしです♪